
「みみずく」は、NPOに関心のある方々に向けてメッセージを発信する「市民活動情報誌」です。その時々の問題をKECの視点から特集しています。ここでは、「みみずく」に掲載した巻頭言をご紹介します。
■第19号[2005年1月1日発行] 18号へ / 20号へ
「溶解する国で」
〜希望はどこに〜
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市民活動センター神戸 理事長 実吉 威
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地球がほんの少し体を震わせただけで、十年前には六千余名が亡くなり、今度は十数万という途方もない犠牲者が出た。スマトラ沖のちょうど一年前には、イラン・バムの地震で三万数千名が亡くなっている。誰もが震災から十年という日を心穏やかに迎えたかったはずだが、やってきたのは化け物のような大災害だった。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、気が遠くなるような復興の道のりが少しでも平坦なものになるよう願わずにはいられない。私たち
巨大な生き物の、薄皮一枚の上に暮らしていることを、時々は思い起したほうがいい。
しかしいわゆる自然災害ばかりではない。 震災から十年。神戸・阪神間の市民活動も大きく変化してきたが、日本の社会もこの間、実に大きく変わってきた。少子高齢化と経済のグローバル化が否応なく進み、「安心・安全」とは対極の「不安・不満・危険」は残念ながら高
まる一方だ。一九九八年、私たちが中間支援をメインテーマに据えたこの年にNPO法や介護保険法も整備されたが、同時に雇用情勢も大きく悪化し(緊急雇用対策が翌年から)、中高年男性を中心に自殺者も急増した。その後、フリーター・ニートの増加や年金制度の空洞化、そして信じられないよう家庭内での事件の多発など社会問題が噴出し、政府がすべての問題を解決できると
いう幻想を多くの人が信じなくなったのもこの頃からだ。
いわば緩慢な災害が私たちの暮らしを襲い続ける時代。人生におけるリスク
と不安定さはますます大きくなる。「成長しない」ことを前提に政治・行政は
社会のしくみを変えなければいけないのに、まだ右肩上がりの経済成長と、行政がすべてをやるという夢を捨てきれずにいる。負債はどんどん将来の世代に先送りされる。
私たちが震災で学んだのは、災害時には平時の社会制度が機能しなくなるということだけではない。より厳しく学ばされたのはむしろごく日常的なことだ。災害で一番深く、そして長く傷つく「災害弱者」は、日頃から厳しく弱い立場に置 かれているということ。そしてそれは実は人ごとではなく、多数者、 「強者」にとってもいつ我がこととなるか本当に分からない時代になったという新しい日常。社会はまだこの「日常」に十分対応しようとはしていない。そのことも、震災後の社会の中で私たちは学ばされた。
しかも求められているのは、社会のしくみだけでなく、私たち自身の意識変革であり、生き方や働き方、価値観の変革というとても根本的なものだ。社会課題の面からも、私たち自身の生き方という面からも、市民による公益活動がますます必要とされてくるのは間違いなく、そこに希望を見出すしかない。
NPOが元気な社会は、人と人がつながり、支え合える社会。また、NPOは声なき声を代弁し、既存の社会のあり方に警鐘を鳴らす炭鉱のカナリア。NPOの成長が広く社会全体の安心・安全につながるはずだが、そのことをもっともっとリアリティをもって伝えていく必要がある。活動の基盤整備には市長や知事のビジョン、リーダーシップもきわめて重要だが、同時に私たちNPO自身の発信力、共感呼び起こし力が問われてくる時代だ。
■その他の掲載内容/全16ページ▼
<特集>
・震災から10年 市民活動の現状と展望を語る
・「ひょうごボランタリー基金」のゆくえ
・たかがラジオ、されどラジオ
−北の大地に誕生したアイヌ語放送局−
<連載>
・指定管理者制度と「裸の行政」
・おサイフケータイとNPOのビミョーな関係
・KEC元町サロン
・認定NPO法人制度の一部要件緩和
・追悼 高森一徳さん
・ご入会・ご寄付等お礼 |
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