- この記録は、2007年12月に行われた「NPOメッセ in 関西2007」の第2分科会「NPOのアドボカシー」(12月2日)で出された会場からの意見を整理したものです。
- 当日は多岐にわたる質問すべてに答える時間がなく、いくつかポイントを絞った質と、論点・課題の抽出で時間が終わってしまいましたが、出された質問・意見を整理するだけでも価値があるだろうということで、当日、参加者の同意を得て、質問者のお名前を削った上でここに公開することになりました。
- この質問への答えを含め、分科会全体の記録は後日、実行委員会(事務局=日本NPOセンター、http://www.jnpoc.ne.jp)より公開される予定です。
- 質問票に書かれたものを(明らかな誤記以外は)そのまま入力し、テーマごとに整理しました。入力と分類整理の責任は市民活動センター神戸にあります。訂正等のご連絡は市民活動センター神戸までお願いします。
- この分科会担当の実行委員として、実吉個人の感想を末尾に付しました。
整理責任・実吉威(市民活動センター神戸;メッセ実行委員)
入力・興津慶(市民活動センター神戸)
(連絡先 メール:kiroku@kobekec.net)
(内容)
- 市民の声・ニーズをどう拾うか/何を「課題」と設定するか/提言が市民(当事者)の声だという「正統性」をどう持てるか
- その声をどう伝え、実現するか/無関心層への働きかけ/伝え方の問題
- 当事者意識
- どのように実現するか(特に議会、政治へのアプローチ)
- NPO、中間支援NPOの役割(どれほど現場を知っている?/現場との乖離はないか?)
- アドボカシーの活動を支える資源
- 成果は?/評価/何がどう変わったか
- マスコミ
- 個々のテーマについて
- 意見表明、その他
◆感想とコメント
NPOメッセ 第3分科会「NPO市民によるアドボカシーにNPOが果たせる役割とは」
(2007年12月2日、午後1時30分~5時 大阪経済大学にて)
ゲスト 岩附由佳さん(特定非営利活動法人ACE代表理事)
小林幸治さん(特定非営利活動法人市民がつくる政策調査会事務局長)
山口祐子さん(特定非営利活動法人浜松NPOネットワークセンター顧問)
コーディネーター 仲川元庸さん(特定非営利活動法人奈良NPOセンター事務局長)
参加者:37名(ゲスト、スタッフ含む)
1.市民の声・ニーズをどう拾うか
何を「課題」と設定するか
提言が市民(当事者)の声だという「正統性」をどう持てるか
【代表性、正統性】
- (小林さんへ)市民の「代表性」、「正統性」は何でしょうか? 関西の地方自治体では「特定の人権NGO」とのゆ着が大きな問題となっています。彼らも「市民」ですが、彼らに不信を持つ市民は少なくありません。「市民」の条件をどうお考えですか?
- アドボカシーでは「結局、誰の声なのか?」ということが常に課題としてつきまとうと感じました。支援を必要とする人、支援の“対象”となる人の声をきちんと届ける、ということが重要なのは言うまでもないですが、支援する側の声<「○○を支援すべし」という声>が誰の声なのか、ということにも配慮が必要と思われます。特に、国境を越えた支援やアドボカシーを行うときは、国内の当事者ないしそれに準じる人の声が、どこかに反映されてないといけないと思います。
というわけで、質問としては、小林さん(が)当事者の声を代弁することに気をつけていることは何ですか?
【政策と実態の乖離】
- 現場のもつ人々の思いを政策化していく、でもその中で、現場とのかいり(現場がほんとうにほしいものとはちがうものになってしまった)ことはありますか?
【課題の掘り起こし方、市民・団体へのアプローチ】
- (小林さんへ)市民がつくる政策調査会では課題の掘り起こし作業の方法として提案書を市民から回収すること、他の市民団体と会うこと以外にも何かなさっているのでしょうか? 例えば、不満をもっていてもばく然としていてどうしていいか分からない市民や団体などに対して何らかの仕掛けや働きかけをなさっているのかどうかお聞きしたいです。
- (山口さんへ)センターとしてのアドボカシー活動は、事業を進めながら行政に対して行われたということでよいのでしょうか? ←確認です。
だとしたら、その事業を行うにあたっての課題設定(ニーズ掘り起こし)は、どうやってされていたのでしょうか? - (岩附さんへ)当事者の声を伝えるというのがありましたが、グローバルな枠で運動をしようとすると当事者の数は膨大で、一つひとつの声を集約していくこと自体大変な作業だろうと思う。しかも、当事者は教育を受けてない子どもや社会に疎外された特に弱い立場にある人ばかり。彼らの声をどうやって大きくし、伝えていくのか、その具体例をお伺いしたい。
2.その声をどう伝え、実現するか
無関心層への働きかけ
伝え方の問題
【問題意識、モチベーション】
- 地域社会では、問題意識を持てない人も多く、持っている人も地域経済がまだ大変な中で活動に参加できない人が現状です。でもできる人からと頑張っていますが、皆さんのモチベーションの原動力は何ですか?
【無関心層の巻き込み方】
- アドボカシーの場に、全く興味のない市民層を連れ出すために何かの工夫されていることがあれば教えて下さい。
- 市民自治、NPO、ボランティア、公協、、、そんなことには全く関わりのない(下手をすると知りもしない)人々、特に若者に対してどのようにアプローチしていきますか?
【若者の巻き込み方】
- アドボカシー策定にあたり、若者のうまい巻き込み方はあるか?
【「易しく」伝えることの難しさ、ジレンマ】
- (岩附さんへ)アドボカシーは「分かりにくいものを分かりやすくする」ことが重要と言いましたが、それ故に「伝えるべきことを伝えられない」リスクやジレンマはありますか。 ①そういった経験があるか、②それをどのように整理されているかを教えてください。
【アメリカのNPOのアドボカシー】
- (岩附さんへ)2006年に国際交流基金日米センターのNPOフェローとして、アメリカのWinrock Internationalで児童労働分野のアドボカシーについて研修されたと伺っております。アメリカのNPOにおけるアドボカシー手法の特徴について教えて下さい。日米における非営利活動の環境の違いも踏まえて、アメリカのアドボカシー手法で、日本でも取り入れそうなもの、取り入れにくいものなどありましたら教えて下さい。
3.当事者意識
- 「市民によるアドボカシー」を考えたとき、普通の市民に「当事者性(意識)」をもってもらうことが重要になると思います。よく、市民の意識の低さ、参加の少なさ、あるいは、NPOの市民へのリーチ力の低さなどが話題になりますが(、)この点について、みなさんが取り組まれてきた事例、アイディアなどをお聞かせいただければと思います。
4.どのように実現するか(特に議会、政治へのアプローチ)
【誰にアプローチするか】
- 小林さんのお話も山口さんのお話も政策提言には議員をまき込んでというようなお話だったと思うのですが、党派を考えると誰に声をかけたら良いのでしょう?区役所の場合は、たて割で、なかなかとりあってもらえませんが、区長とか副区長さんに提案するのがよいのでしょうか?
【議員・議会】
- (小林さんへ)政策実現の実現化のためには、議会での決定権を持っている人の関与が必要であるとのお話がありましたが、役員になってもらうために自治体議員、国会議員への働きかけをどのように行っていったのですか。
- (山口さんへ)実際に市議になられて、先程のお話の中でも「一人会派で…」とのお言葉がありましたが、他の市議会議員の方との関係とか、現場でのご苦労話などありましたら、お聞きしたいです。
- (小林さんへ)市などの地方自治体の条例になったような具体的事例がありましたら紹介をして下さい。
【政治と市民】
- 政策レベルでの変化をおこす(構造レベルの変化のためにも大きな力を持つと思いますが)ためには、政治、議員・議会との関わりも、避けるべきではないとは思います。一方、しみん一般と政治とが遊離した状況では、そこに近づき過ぎることが同時に、一緒に遊離してしまう危険性もはらんでいるのではないかと思います。“アドボカシー”の中に、人びとの‘市民化’も視野に含んで考えるべきか、又、そうであるならば、どのようなことが大切か、お考えをおききしたいと思います。まとまらない質問ですみません。
5.NPO、中間支援NPOの役割(どれほど現場を知っている?現場との乖離はないか?)
【現場の声を拾えているか】
- 中間支援の方々、代議員の方は、どのくらい現場を歩いておられるのでしょうか? これまで、「歩いて、みて、調べて、ちゃんとやれた!」という実例や、ほかにもっとよいやり方で、現場の声をきちんとひろったという実例をお持ちでしたら、教えて下さい。
- (小林さんへ)小林さんと山口さんで「中間支援組織と行政の関係」イメージが違う印象を受けました。特に小林さんは「個々の市民団体ではなく、それを中間支援組織がまとめた上で政策提案をすべき」というイメージを持ったのですが…。できましたら、もう少し詳しくご説明いただけますでしょうか。
- 小林さんのようなNGOがなければ、政策提言は、中間支援団体にもち込み、提言していくということがベストでしょうか?
6.アドボカシーの活動を支える資源
- 現場が毎日うごいているものである場合、会議の時間や、会議に代表者が出る間の代替スタッフの確保や、給料支払いができないということも1つの課題だと思います。
- 運営の収入源は何でしょうか?
- 継続している「力」は何でしょうか?
- (山口さんへ)
・8人の事ム局体制
・様々な自主事業の実施
・河川整備事業まで自主事業として継続出きる
など その資金は、どのようにしておられるのでしょうか。
7.成果は? 評価
何がどう変わったか
- アドボカシーの評価方法はどのように行うか?
- 成果・評価を伝える方法は?
- 外国人支援活動によって、どういったアドボカシー活動を作り出して、それで浜松は何がどのように変わりましたか?
8.マスコミ
- NPOのマスコミからの扇動にどう対処しますか?
- NPOとマスコミのよい関係、スタンスとは?
9.個々のテーマについて
【児童労働について】
- (岩附さんへ)今日、はじめて児童労働について考えさせられました。本来は後から自分で調べるべきなのでしょうが、あえていくつか質問させていただきます。
・基礎教育・心身に悪影響を及ぼす児童労働の具体例を教えて下さい。
・それを改善するために優先順位を付されて活動されているとのことでしたが、その上位3つを教えて下さい。
・なぜ児童労働の改善に取り組もうと思われたのですか。
・児童労働改善のため、今すぐ私たちができることを教えて下さい。
【地域の多文化共生施策について】
- (山口さんへ)地元自治体でブラジル人の方が7%をこえていますが、多文化共生の施策がまだ弱く、一市民として、ブラジルの方々と交流し、くらしにくい面を改善していこうと思っています。 今、キーパーソンを探している段階です。言葉の問題(私がポルトガル語がわからない)もありますが、どこで、どんな人と接点をつくり、何をテーマに活動していけばよいか、又、行政の協力を得ていく上での留意点があれば教えて下さい。
10.意見表明、その他
- 今日の分科会におけるアドボカシーの目標を教えて下さい。
- 行政の縦割りと同じように市民活動自身が縦割り化している。課題解決をその分野のリーダー的団体に働きかけても、当事者団体そのものが課題と感じていなかったり既得権を守ることが大事と思っていて、半々胸襟を開いてもらえないNPO同士の連携に希望が持てない状況にいる。
- 山口さんのような方が地域にいらっしゃれば、その地域は行政に対して大きな力を持つことができるのだろうな、と思いながら聞かせてもらいました。
- (御三方に)使用されていたPowerPointのレジュメのコピーがほしいのですが、HP上等で公開されていますでしょうか。
◇感想とコメント
- 「アドボカシー」という語に対して持つイメージは人によりかなり多様で、「アドボカシー」に対するスタンスも当然のことながら様々でした。また、「アドボカシー」を有効なものとするために必要な行動はきわめて多岐にわたることが改めて確認されました。小林さんの整理が分かりやすいと思います。
1)課題の掘り起こし、問題提起(←円卓会議など)
2)政策調査(←ヒアリングなど)
3)政策提案(提言書)の作成
4)議員、政党への投げかけ(ロビイング)
5)・・・・・・・・・ ←小林さん、ここは何ておっしゃっていましたっけ?(記録漏れ)
冒頭にも書いたように、この日は論点の整理くらいで終わりましたが、「アドボカシー」を切り口として、NPOセクター全体の課題まで見通せた有意義な部会でした。 - 要するに、NPOの活動の根底には「世の中を少しでも良くしたい」ということがあって、そこからいろんな動きが始まる。直接誰かをサポートする活動がすべての原点だが、それだけで足りなければ社会の仕組みを変えようと議会や行政や社会一般に対して働きかける。そしてそれに必要な調査や提案書作り、交渉、署名集め、広報、投書、街頭デモ等々、いろんな行動が必要になる。
一つの団体でやれることはごく限られているから、異種の団体やセクター横断的なネットワークを組んで、常に情報交換や議論をすることが大事だと改めて感じました。NPOの場合、日常の活動以外にそのよう なことに時間を割くのは難しいが、しかし死に物狂いでそういった時間をひねり出すしかない。何よりNPO自身が当事者だから、当事者が声を出さないと誰も勝手に動いてはくれない(何とかマネジメントを改善して時間を作り出しましょう!)。その中でやはり中間支援NPOへの期待は大きく、地域で諸団体と連携し、NPOの現場からの「声」を社会に届けていく役割を、少しずつでも担っていかなくてはならない。 - 細かい差異を捨象すれば、「困っている人の状況を少しでも改善する」「そのような状況を生みだす構造自体を変革する」ということだろうと思います。こういった議論の場を継続し、「社会を良くする」ためにどんな手法が有効なのか、その知恵を蓄積していくことも重要でしょう。本来そういったことには、研究者にもっと関わってほしいところですが、この分科会に限らず全般に学者の姿が少なかったのは残念です。ともあれ、「小さい差異を捨象して」大きくつながっていきたいものです。
市民活動センター神戸 実吉 威